東京地方裁判所 平成8年(ワ)23932号 判決 1999年11月30日
原告
社団法人日本レコード協会
右代表者理事
A
右訴訟代理人弁護士
岡邦俊
同
小畑明彦
被告
株式会社大阪有線放送社
右代表者代表取締役
B
被告
日本有線放送連盟
右代表者理事長
C
右両名訴訟代理人弁護士
濱崎憲史
同
濱崎千恵子
同
北村行夫
同
内田法子
主文
一 原告の請求をいずれも棄却する。
二 訴訟費用は、原告の負担とする。
事実及び理由
第一 請求
一 被告らは、原告に対し、連帯して金一億三二八九万円及びこれに対する平成八年一二月二一日から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。
二 被告らは、原告に対し、連帯して金二億一一二〇万円及びこれに対する平成九年四月一日から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。
第二 事案の概要
一 争いのない事実
1 当事者
(一) 原告は、レコード製作者の二次使用料を受ける権利を行使することができる団体である(著作権法九七条三項)。
(二) 被告株式会社大阪有線放送社(以下「被告会社」という。)は、有線放送事業等を目的とする会社であって、全国的な有線放送網を有する。
(三) 被告日本有線放送連盟(以下「被告連盟」という。)は、有線放送事業者の団体である(著作権法九七条四項、九五条九項)。被告会社は、被告連盟に加盟している。
2 本件契約の締結
原告は、平成四年六月二〇日、被告連盟との間において、次のような契約を締結した(以下「本件契約」という。)。
第一条 被告連盟は、被告連盟に属する事業者がその有線放送に使用するレコードの二次使用料として、本契約期間中原告に支払うべき金額は、以下のとおりであることを承認し、かつ、支払の責に任ずる。
平成二年度 三〇〇〇万円
平成三年度 四〇〇〇万円
平成四年度 五〇〇〇万円
平成五年度 六〇〇〇万円
第六条 本契約の有効期間は、平成二年四月一日より平成六年三月三一日までとする。
第七条 平成六年四月一日以降については、聴取料収入総額より、原告被告連盟間で合意した料率を控除した金額の一パーセントを二次使用料とする算出方式を適用するものとする。なお、上記二次使用料率の適用が不合理となった場合には、原告被告連盟協議の上、二次使用料率を定めるものとする。
二 原告の主張
1 本件契約の内容は、二次使用料について、料率方式を採用することに合意し、本件契約締結後、控除料率を協議して定めるというものであった。
2 原告と被告らは、本件契約第七条に基づいて平成六年度以降の控除料率を決定するため、平成六年一一月一五日を第一回目として、合計八回の交渉を行った。
第一回から第三回の交渉は、本件契約第七条を前提として、控除料率をどのように定めるかについて協議された。この段階で、被告らから、控除料率の要素として、<1>商業用レコードを使用していないチャンネルの分(チャンネル比率)、<2>二次使用料請求権のない商業用レコードの分(レコード比率)、<3>急激な二次使用料の支払義務を避けるための経過措置(経過比率)が提案された。
被告らは、平成七年九月一四日の第四回交渉の際に、原告に対して、右<1>ないし<3>について具体的な提案を行った。その内容は、<1>チャンネル比率としては、商業用レコードが使用されているチャンネルが四四〇チャンネルのうち一九〇チャンネルあるとの理由で、四四〇分の一九〇、<2>レコード比率としては、二次使用料請求権の対象となる商業用レコードは、全体の四割に当たる邦楽全部と六割に当たる洋楽のうち「実演家、レコード製作者及び放送機関の保護に関する国際条約」未加盟のアメリカのもの(六割)を除いたものであるとの理由で、○・四と〇・二四の合計○・六四、<3>経過比率として、平成六年度を○・六とし毎年度○・一ポイントずつ増加して五年目の平成一〇年度に一・○となる数値と○・七(各年度共通)というものであった。
これに対し、原告は、平成七年一〇月一三日の第五回交渉の際、次のような提案を行った。すなわち、<1>チャンネル比率については、被告会社発行の番組表を調査したところ、四四〇チャンネル中、商業用レコードを使用しているチャンネルが二五〇チャンネル以上あったので、最低限四四〇分の二五〇とする。チャンネルごとの視聴率の差をどのようにチャンネル比率に反映させるかについては、今後の研究課題とする。<2>レコード比率については、原告が実態調査を行うまで暫定的に被告ら提案の○・六四を受け入れる。<3>経過比率については、平成六年度○・六とし、毎年度○・二ポイントずつ増加させて三年目の平成八年度に一・○とする。原告側の右提案に対し、被告らが後日回答を行うこととして第五回交渉は終了した。
平成七年一一月二八日の第六回交渉において、被告らは原告に対し、原告が前回提案したチャンネル比率、レコード比率については、特に異議を述べなかったが、経過比率については、平成六年度から平成八年度までの二次使用料額の上昇幅を小さくして三年目の平成八年度に二次使用料額が一億円を超えるような経過比率とし、平成一〇年度には一・○とするという提案をした。
平成八年一月二三日の第七回交渉において、原告は、被告らに対して、平成六年度から四年目の平成九年度に経過比率を一・○とする案を示したが、被告らは、平成八年三月になっても何ら回答してこなかった。そこで、原告は、第六回交渉における被告らの提案に沿う形でさらに譲歩することとし、平成一〇年度に一・○となり、かつ、平成八年度に二次使用料額が一億円を超えるような経過比率にするという提案を記載した書面を被告連盟宛に送付した。
被告連盟は、右書面送付から二か月以上も経過した平成八年六月一一日付けで「過去分(平成六年度及び平成七年度分)の支払額については平成五年度迄の実績を基にして金額を算出して支払いを完了し、平成八年度以降については改めて協議を継続していきたい。」という内容の書面を原告に送付してきた。原告は、被告連盟に対し、同年七月一五日付けの書面で、料率制を前提としつつ、平成六年度及び平成七年度分については過去分の処理として定額とし、平成八年度分以降については算式を協議するという提案を行ったところ、被告連盟は、同年八月五日付けで、平成八年度、平成九年度も含めて、定額による二次使用料額の提案を記載した書面を送付してきた。
原告は、被告らが一旦料率方式に基づき、一定の控除料率を採用するところまで合意しながら、右のように態度を翻し定額方式に固執するに至ったので、それまでの譲歩案を白紙に戻して本訴を提起した。
3 右2で述べた交渉経緯から明らかなとおり、原告と被告らは、本件契約第七条の料率方式を前提とし、控除料率として、<1>商業用レコードを使用していないチャンネルの分(チャンネル比率)、<2>二次使用料請求権のない商業用レコードの分(レコード比率)、<3>急激な二次使用料の支払義務を避けるための経過措置(経過比率)を採用することまで合意した。
しかし、右<1>ないし<3>に代入すべき具体的な数値の一部が合意に達しなかったため、具体的な二次使用料額は確定していない。このように、債権の目的を当事者の合意ないし協議によって確定することが約定されながら、合意不成立のために目的が確定しない場合には、債権者は、その妥当とする主張額に基づく給付請求が可能であるというべきである。
4 控除料率の具体的な数値については、次のようにすべきである。
(一) チャンネル比率については、右2のとおり、原告が最低限四四〇分の二五〇(〇・五六八)を主張したのに対し、被告らは、四四〇分の一九〇(○・四三二)を主張した。しかし、被告連盟が交渉過程において作成し、原告に提出した資料によると、総番組数に対する市販音楽ソース(商業用レコード)使用番組数の比率は、三一五分の一九〇(〇・六〇三)であるから、原告が主張する右チャンネル比率は、実際の数値を上回るものでなく妥当である。
(二) レコード比率については、右2のとおり、○・六四とする旨の暫定的合意が成立した。
(三) 経過比率については、右2のとおり、平成五年度までの二次使用料の額が定額方式によって不当に低く押さえられていたことからすると、原告が当初主張した平成六年度○・六、平成七年度○・八、平成八年度一・○が相当である。
5 著作権法上、被告連盟は、所属の有線放送事業者が支払うべき二次使用料額を原告との間において協議して定める権限を有するが、被告連盟は右協議による二次使用料を原告に支払うべき義務はなく、本来の支払義務者はあくまでも被告連盟に加盟している各有線放送事業者である。
被告会社は、被告連盟に加盟している主たる有線放送事業者であることから、被告会社が支払うべき二次使用料とその外の被告連盟に加盟している有線放送事業者が支払うべき二次使用料とを合わせて原告に支払う旨約束し、現実に支払ってきた。
したがって、被告会社は、原告に対し、被告連盟に加盟する有線放送事業者の各年度の二次使用料全額を支払うべき義務を負っている。
本件契約において、被告連盟は、原告に対して、平成二年度から平成五年度までの二次使用料の支払義務を負うことが明記され、被告連盟名義で全額が原告に支払われた。その趣旨は、被告連盟において被告会社の二次使用料支払債務を重畳的に引き受けたものと解すべきである。したがって、被告連盟も原告に対し、被告会社と連帯して二次使用料支払債務を負う。
6 被告らが支払うべき二次使用料の額は、平成六年度については、聴取料収入総額五四五億円に、〇・五六八と〇・六四と〇・六と〇・〇一を乗じた一億一八八七万円、平成七年度については、聴取料収入総額五六四億円に、〇・五六八と〇・六四と〇・八と〇・〇一を乗じた一億六四〇二万円、平成八年度については、聴取料収入総額五八一億円に、〇・五六八と〇・六四と一・〇と〇・〇一を乗じた二億一一二〇万円となる。
7 よって、原告は、被告らに対し、連帯して次の金員を支払うことを求める。
(一) 平成六年度及び平成七年度の二次使用料残金合計一億三二八九万円並びにこれに対する平成八年一二月二一日から支払済みまで年六分の割合による遅延損害金
(二) 平成八年度の二次使用料二億一一二〇万円及びこれに対する支払期限の翌日である平成九年四月一日から支払済みまで年六分の割合による遅延損害金
三 被告らの主張
1 本件契約の内容は、二次使用料について、原告と被告連盟の間において妥当な控除額を定めた上で料率一パーセントを適用するというものであり、場合によっては、一パーセントを下げる余地を残すために、「なお、上記二次使用料率の適用が不合理となった場合には、原告被告連盟協議の上、二次使用料率を定めるものとする。」という条項が設けられた。
2 原告と被告連盟の間で、平成六年一一月一五日を第一回目として、八回にわたって二次使用料について交渉を行ったこと、原告が右二2で主張するようなチャンネル比率、レコード比率及び経過比率について交渉の過程で話し合われたことは認めるが、原告が右二3で主張するような合意は成立していない。したがって、原告が合意に基づく請求権を有するということもない。
3 右二4のチャンネル比率、レコード比率、経過比率の具体的な数値に関する主張は争う。
4 右二5の支払義務者に関する主張は争う。
第三 当裁判所の判断
一 原告被告連盟間における交渉経緯
証拠(甲一二、二三、二四、二六ないし三〇、三二、乙一、六ないし八、一七、一八、証人D、同E、同F、被告連盟代表者)と弁論の全趣旨によると、次の事実が認められる。
1 被告連盟は、平成六年六月二〇日、社団法人日本芸能実演家団体協議会(以下「芸団協」という。)との間で、実演家に支払う二次使用料について、本件契約と同様の内容の契約を締結した。
2 原告と被告連盟は、本件契約第七条に基づいて平成六年度以降の二次使用料を決定するため、平成六年一一月一五日を第一回目として、平成七年五月一六日に第二回目、同年六月二二日に第三回目の交渉を行った。
被告連盟は、芸団協との間においても、同様の交渉を行っていたが、被告連盟において原告及び芸団協との交渉を担当していたF(以下「F」という。)は、平成七年七月一〇日、芸団協に対して、二次使用料改定案と題する書面を交付した。その内容は、<1>被告会社の番組数四四〇のうち市販音楽ソースを使用する番組が一九〇あるので、聴取料収入に四四〇分の一九〇を乗じる、<2>被告会社の番組のうち四〇パーセントが邦楽ソースを使用する番組、六〇パーセントが洋楽ソースを使用する番組であるが、洋楽のうち六〇パーセントが「実演家、レコード製作者及び放送機関の保護に関する国際条約」未加盟のアメリカのものであるので、聴取料収入に、〇・四(邦楽の割合)と〇・二四(洋楽のうちアメリカ以外のものの割合)の合計○・六四を乗じる、<3>被告会社の番組の邦楽と洋楽の割合は、右のとおりであるところ、原告及び芸団協における邦楽と洋楽の割合は、邦楽八〇パーセント、洋楽二〇パーセントであるので、聴取料収入に〇・七を乗じる、<4>聴取料収入に、平成六年度については〇・六、平成七年度については○・七、平成八年度については〇・八、平成九年度については〇・九を乗じ、平成一〇年度については一・〇を乗じる、というものであった。
Fは、平成七年九月一四日の第四回交渉の際に、原告に対して、口頭で、右<1>ないし<4>と同様の説明をした。
3 原告は、平成七年一〇月一三日の第五回交渉の際、次のような提案を行った。
すなわち、<1>チャンネル比率については、原告の調査では、四四〇分の一九〇ではなく、四四〇分の二五〇以上となる。チャンネルごとのウエイトづけについては、今後の研究課題とする。<2>レコード比率については、原告と芸団協が実態調査を行うまで、○・六四とする。<3>経過比率については、平成六年度○・六とし、毎年度○・二ポイントずつ増加させて三年目の平成八年度に一・○とする。原告の右提案に対し、被告連盟は、後日回答を行うこととして第五回交渉は終了した。
平成七年一一月二八日の第六回交渉において、被告連盟は、原告に対し、原告が前回提案した数値をそのまま適用すると、二次使用料の額は、平成六年度が一億一八九〇万円、平成七年度が一億六七九〇万円、平成八年度が二億二二四七万円となるが、このような高額な金額は支払うことができないと述べて、前回の原告の提案を拒否した。
4 平成八年一月二三日の第七回交渉において、原告は、被告連盟に対して、平成六年度から四年目の平成九年度に経過比率を一・○とする案を示したが、被告連盟は、右交渉後も回答をしなかった。そこで、原告は、同年三月ころ、被告連盟に対し、平成一〇年度に経過比率が一・○となり、かつ、平成八年度に二次使用料額が一億円を超えるという内容の提案をするとともに、同月二七日付けの書面を被告連盟に宛てて送付し、右提案が受け入れられない場合は、交渉を白紙に戻し、第三者の判断をあおぐ手続を進める旨通知した。
被告連盟は、平成八年六月一一日付けで、「過去分の支払額については平成五年度迄の実績を基にして金額を算出して支払いを完了し、平成八年度以降については改めて協議を継続して行きたい。」という内容の書面を原告に送付した。そこで、原告と被告連盟は、同年七月一一日に第八回交渉を行い、原告は、被告連盟に対し、平成六年度は七三〇〇万円、平成七年度は八七〇〇万円とし、平成八年度は算式の導入を前提として協議を行い、一億円を超える金額とする、平成一〇年度は算式の使用料率を一パーセントとする旨の提案を行った。これに対し、被告連盟は、原告に同年八月五日付けの書面を送付し、平成六年度七〇〇〇万円、平成七年度八〇〇〇万円、平成八年度九〇〇〇万円、平成九年度一億円という定額による二次使用料額の提案を行った。
5 原告は、被告連盟が右のとおり平成八年度以降も定額方式によることを提案してきたため、交渉を打ち切って本訴を提起した。
なお、証人Eは、被告らは、平成七年一一月二八日の第六回交渉において、第五回交渉における原告の提案のうち、経過比率について、平成六年度から順次上昇させて平成一〇年度に一・○とする提案をしたほかは、原告の提案を了承した旨証言するが、この証言は、これに反する証人Fの証言及び右認定のその前後の交渉経緯(第四回交渉における被告連盟の提案及び第七回交渉以降における被告連盟の対応)に照らすと、到底信用することができない。
二 証拠(甲一の一、証人D、同F、被告連盟代表者)によると、本件契約において、第七条の聴取料収入総額から控除する金額は、原告被告連盟間で合意した料率と定められているのみで、その内容については、今後原告被告連盟間で協議して決定することが予定されており、特にその内容が決まっていたということはないものと認められる。
右一で認定したとおり、原告被告連盟間で交渉が行われたのであるが、右一認定の事実からすると、原告被告連盟間における交渉は決裂し、何ら合意に至らなかったものと認められる。
そうすると、原告被告連盟間においては、平成六年度以降の二次使用料の額については、聴取料収入総額から原告被告連盟間で合意した料率を控除した金額の一パーセントとするという合意が存したのみで、その控除すべき料率の内容については何ら合意が成立していないものと認められる。
三 以上述べたところからすると、本件においては、原告被告連盟間に、二次使用料の額について、きわめて抽象的な合意が存するのみで、その具体的内容が定まっていないものというべきである。
当事者間の協議により具体的な数値について合意が成立しないとしても、金額を確定するための指標について合意が成立し、それに数値を当てはめると具体的な金額が確定する場合には、合意に基づく給付請求が可能な場合があり得るが、本件においては、右のとおり抽象的な合意しか成立していないのであるから、それに基づいて具体的な金額の給付を求めることはできないというべきである。
なお、原告は、協議が整わないかぎり具体的請求権が発生しないとすると、支払義務者はいたずらに協議不調に持ち込むことにより永久に支払を免れることになり、それは不当であると主張する。本訴において、原告は、当事者間の協議により給付請求可能な合意が成立したとして本件請求をしているのであるから、右主張は、当事者間の協議により完全に合意が成立しないとしても、具体的請求権の発生を認めるべきであり、そうしないと、支払義務者はいたずらに協議不調に持ち込むことにより永久に支払を免れることになる旨の主張と解される。しかし、本件においては、右のとおり抽象的な合意しか成立していないのであるから、それに基づいて具体的な金額の給付を求めることはできないというべきである。また、当事者は、二次使用料の額について、協議が成立しないときは、文化庁長官の裁定を求めることができ、その裁定に不服がある当事者は、訴えを提起してその額の増減を求めることができる(著作権法九七条四項、九五条一〇項、九五条一一項、七二条一項)のであるから、二次使用料の額について、支払義務者が協議不調に持ち込むことにより永久に支払を免れることになるというようなことは起こる余地がない。
また、原告は、借地又は借家の賃料増減請求権(旧借地法一二条、旧借家法七条)に関し、法定された右請求権の具体的内容の決定につき当事者の協議による旨の約定が存在していても、賃貸人は、増額した金額の給付を請求することができるのであるから、これと同様に本訴請求が認められるべきであると主張するが、賃料増減請求権は、形成権であって、その権利が行使されると、当然に適正な金額まで賃料が増減する効果が生じるのであるから、その増加した金額を請求することができ、しかも、右の各規定は強行規定であるから、当事者間に右のような約定が存していても請求することができるのである。これに対し、二次使用料の請求権については、その額は、当事者間の協議によって決定するとされており(著作権法九七条四項、九五条九項)、原告は、当事者間の協議によって給付請求可能な合意が成立したとして本件請求をしているのであるから、右の賃料増減請求権の場合とは事案を異にすることは明らかである。
四 以上の次第で、その余の点について判断するまでもなく原告の本訴請求はいずれも理由がない。
(裁判長裁判官 森義之 裁判官 榎戸道也 裁判官 岡口基一)